ドルコスト平均法の考察2~一括全力買いとの比較
今回は、最初に全額購入してしまう一括買いとドルコスト平均法の比較をしてみようと思います。
右肩上がりチャート
まずは、SS外国株式インデックスの5年チャートをご覧ください。ここ1年は上下してますが、基本的には綺麗な右肩上がりチャートですね。
では、5年前の2003年1月に投資を開始していたらどうなったか?
結果はこちら 谷(凹)型チャート
総投資金額が60万円に対して、ドルコストで積み立てた場合で85万7668円と40%ちょっと増えています。
それに対して、もし2003年1月に60万円分全額買っていたらどうなったか? 表の「一括買い結果」の列です。
投資金額60万円が、124万8771円と倍になっています。
つまり、右肩上がりのチャートにおいては、ドルコストでも利益が出るが、最初に一括買いするともっと利益が出る。
ただし、最初に全額投資する資金は無かったかもしれません。給料などから毎月1万円づつという金額だから投資できたという状況もありえます。
また、総投資金額が同じ60万円ですが、ドルコストの場合実際に投資資金として働いていた期間は約半分です。(5年前に積み立てた1万円分は5年間働いているが、1年前に積み立てた1万円分は1年間しか働いていない。)それを、同じ土俵で比べるのはやや強引だったかもしれません。
しかし、右肩上がりの期間において、投資資金がたくさん有るのにわざわざ数年において細かく投資するのは得策ではないようです。
数字で検証しませんが、逆に右肩下がりの下落チャートの場合は、一括買いの損失が大きく、ドルコスト平均買いの損失は半分弱になるかと思います
次に、TOPIXに連動するインデックスファンドTSPの10年チャートをご覧ください。2000年のITバブルと2005年~が高く、2003年を底とした谷型のチャートになっています。
では2000年1月に投資を開始していたらどうなったか?
結果はこちら
投資金額が96万円に対して、ドルコストで積み立てた場合で118万1329円と20%位増えています。
それに対して、2000年1月に96万円全額投資していた場合は、85万7996円と10%のマイナスです。
一括買いだと平均取得単価は、最初に買った時の8762円で固定。それに対してドルコストの場合、谷底の部分でも買い続けたため平均取得単価は6364円まで下がったからです。
つまり、谷型のチャートにおいては、ドルコストなら利益が出るが、一括買いだと利益が出ない。谷型チャートはドルコスト積立にとって、得意な展開です。
SS外国株式インデックスの10年チャートを見ると、2003年へ向けて凹んだ後、上昇し2000年時点よりも結構高くなっています。それでも損益の結果を見ると、1999年11月から2001年7月までの間に投資を始めた人は、ドルコスト買いの方が一括買いよりも良い結果となっています。
山(凸)型チャート
インデックスファンドTSPの5年チャートの、日本株が現在と同じ位の株価水準だった2005年10月あたりから現在までの部分を見てみると、それほどきれいではありませんが山型のチャートになっています。
2005年10月に投資を開始していたらどうなったか?
結果はこちら
投資金額が27万円に対して、ドルコストで積み立てた場合で24万6095円と9%位のマイナス。
それに対して、2005年10月に27万円を全額投資していた場合は、27万9679円と約3%のプラス。
投資期間の大半が株価が今の水準よりも高かった為、ドルコスト積立だと平均取得単価が高くなってしまった為。
山型のチャートは、積立にとって苦手な局面です。特に現金が必要なタイミングが山の下がった所と重なった場合は。
しかし、もっと長いスパンで投資を考えているならば、山の下りは次の谷へとつながっていくことになります。一旦下がるのは、平均取得単価の低下につながり、長い目で見ればそう悪い事ではない。
そう考えれば、サブプライム問題などで今下がっているのも…
インデックスファンドTSP(TOPIX)
SS外国株式インデックス
グラフは、下の日付から投資を始めた場合の2007年12月末時点の投資金額1万円あたりの収益です。
右にいくにつれ投資期間が短くなるので、0に収斂していきます。
これを見て気付くのは、
1、一括買い損益の位置が高め。
特にグラフが高くなっている2003年頃から現在まではチャートが概ね右肩上がりでした。右肩上がりの相場において、常にお金が働いていた(フルインベストメント)の一括買いと、実質的には半分しかお金が働いていない分散買いとの差が出たのかなと思います。
一括買いの損益を半分(5千円あたりの損益)にしたグラフも参考として追加しましたが、こちらは積立買いした場合と近い水準のグラフとなりました。
2、ドルコストの損益グラフがなだらかで安定的。
一括買いの損益のグラフは、変動が大きいです。インデックスファンドTSPをITバブルの2000年頃に買っていたとしたら未だマイナスですし、2003年に買っていたとしたら最大8000円ものプラスです。一括買いの場合、その投資タイミングがすごく重要と言えそうです。
それに対して、ドルコストの損益グラフは非常になだらかです。2003年に投資を始めた場合もITバブルだった2000年に始めた場合でも、投資金額あたりの損益はあまり変わっていません。(投資期間が長いのに損益が変わらないって事は、2000年開始の方が利回りは低下しているのですけど)
ドルコスト平均法で積立を行っていく場合、投資を始めるタイミングはあまり気にしなくても良い。
思い立ったが吉日。
まとめ
右肩上がり | 谷(凹)型 | 山(凸)型 | 右肩下がり | |
ドルコスト平均法 | ↑↑↑ | ↑↑ | ↓↓ | ↓↓↓ |
一括買い | ↑↑↑↑↑↑ | → | → | ↓↓↓↓↓↓ |
一括買いは、買うタイミングが重要でそれいかんで損益は大きく左右される。うまくいった時の利益は大きい。
ドンピシャじゃなくてもある程度買うタイミングを計れるという人、ITバブルだった2000年は買わずに総悲観だった2003年に買えるような人、
は安い(これから上がる)と考えた時に買えばいいんじゃないかと思います。(べつに一括でというのにはこだわらず何回かに分散するにしても)
そうではないって人にはドルコスト平均買いがおすすめ。
もし、タイミングは分からないけれども長期的に見ると株は右肩上がりなんじゃないかと考える人は、
キャッシュポジションの割合が多すぎても機会ロス(お金が働かないで寝ている状態)になるので最初に余裕資金の中から有る程度を買ったうえで、以後はドルコストで積み立てていく。ってのも一つの方法かも。
どこまでも下がり続ける事はないだろうけど下がるかもなって人は、
ドルコストで少しづつ買っていけばいいいでしょうし。
どこまでも下がり続けて上がらないだろうという人は、
投資はやらない方がいいかも。もしくは空売りでもどうぞ。
最初の一回だけの投資とドルコスト平均法を比べるよりかは、年1・2回の投資とドルコスト平均法の毎月積立を比較したほうが、実際的だったかもしれません。
おすすめ関連リンク
積立投資で増額ってどうなんやろ [rennyの備忘録]~毎月一定額の積立と、年2回増額投資した場合との比較をされています。
ドルコストがらみではこちらの記事も→小心者のドルコスト平均法



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- [2008/01/08 23:13]
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コメント
大変参考になりました。
http://www.opticast.co.jp/cgi-bin/tm/chart.cgi
の底近辺は、例えば昨年なら年7~8回なので、ここで買うというのがよいのではないでしょうか?但し、臨機応変に対応するためには、ETFのようなリアルタイム売買型の方がよいですが、投信でもまぁドルコストよりパフォーマンスはよさげな気がします。
さて、オプションはご覧のとおりですが(サブポジですが)、最近、銀行ETF買いTOPIX ETF売りを始めました。どうなることやら(笑)。
数百万の資金がある場合、それを勘案すると、藤川さんの「投資信託にだまされるな」であった通り、分散して投資したほうが安全な気は致します。
ドルコスト法は原理上、必ずしや「有利」になるものではありませんが、「リスク」(将来リターンの不確実性)の減少にはつながる(購入単価を平均化するため)ことが実証できたと思います。
騰落レシオによる売買は、マネー雑誌などで見かける投資法ですね。
この記事はドルコストの考察なんで、騰落レシオにあわせた売買の考察って記事もいつか調べて書いてみたいなと思いました。
銀行ETF買いTOPIX ETF売りはリターンリバーサル狙いですか?
新幹線さん
コメントありがとうございます。
考察に関しては私なりの見方なんでこれが正解だと思って読むのではなく、読んだ人が「ドルコスト平均法」について考えるヒントやきっかけになれば幸いです。投資に対する考えや相場観、期待するリターンやとれるリスクも人によって違うと思いますので。
新幹線さんの考えを聞かせていただいて、参考になりました。
ペアトレード
http://stocks.nifty.com/cgi-bin/quote/q?r=6m&c=1321&c2=1615&s=&color=&t=
なお、巷では、ブルーレイ陣営に分があるとの報道を受け、ソニー買い、東芝売りがはやったようですね。
Re:ペアトレード
こうやってチャート見ると、TOPIXも下がってますし、銀行株はさらに下がってますね。
ソニーは今の相場環境から考えると株価比較的好調ですね。
東芝は、昨年夏までの好調がウソの様な株価。「原発関連」って事だったんでしょうが、テーマ買いで株価があがっている銘柄の怖さを感じました。
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